梵鐘の音と五行思想
2022.01.12 Wednesday
8日朝4時のNHKのラジオ深夜便明日へのことばで「平安京の音を聴く サウンドスケープの世界」と題し大阪市立大学都市研究プラザ特任教授 中川眞教授による平安時代の音を再現するお話を聴く機会がありました。
その中で梵鐘に関する興味深いお話がありました。詳しい内容はラジオ深夜便の過去の放送で聴いて頂くことにし、梵鐘に関して備忘録として以下にまとめました。間違っている箇所があるかもしれません。
平安時代を偲ぶ音が僅かに残っているのがお寺の梵鐘の音である。
京都には平安初期から江戸時代の入る直前までに作られた梵鐘のうち32口(※そのほとんどが国宝級で、中にはひびが入っているのもある)が残っており、実際に鳴っているのは15、6口。貴重な梵鐘の音を録音していくと、一つ一つの音の高さに重大な秘密があることがわかった。
雅楽には12の調子(西洋の音階のハ長調、ト長調、へ長調に対して壱越調・盤渉調・平調等、中国から入って来たもの)のどれかに梵鐘の音が合っているということがわかった。
京の都(平安京)の真ん中に立っていると想像すると西の方角から神護寺の鐘の音が聞こえてきます云々
- 西の方角 神護寺の鐘の音(※875年鋳造の約1100年以上前)の音は雅楽の平調(ひょうぢょう)という調子。
- 北の方角 大徳寺の鐘の音 雅楽でいう盤渉調(ばんしきちょう)という調子。
- 東の方角 高台寺の鐘の音 雅楽でいう上無調(かみむちょう)という調子。
- 南の方角 知恩院の鐘の音(※70トンもある日本で最大級の梵鐘)雅楽でいう下無調(しもむちょう)という調子。
- 中央 西本願寺の鐘の音 雅楽でいう壱越調(いちこつちょう)という調子。
(これらは周波数の分析による)
方位(方角)に意味があって五行思想あるいは陰陽五行説という中国から入ってきた思想がある。宇宙は木火土金水でできており、それぞれの要素が対立したり相補って循環している。木火土金水に方位、色彩、季節とかが紐づけされ、北は水の方角・色彩は黒・季節は冬、それにプラスされ音にも紐づけされた。
京都の梵鐘が五行思想によって配置されたのではないかとあるとき気づき調べ始めた。ただし梵鐘そのものが貰ったり貰われたりしてお寺からお寺に移動しているので全部が全部五行思想に合っているわけではない。
五行思想と音
- 北: 水:黒:冬: 玄武:盤渉調(ばんしきちょう)
- 東: 木:青:春: 青龍:双調(そうぢょう)
- 南: 火:赤:夏: 朱雀:黄鐘調(おうしきちょう)
- 西: 金:白:秋: 白虎:平調(ひょうぢょう)
- 中央:土:黄:土用:黄龍:壱越調(いちこつちょう)
今のところ仮説であると教授はお話されていますが、京都市内の各お寺の梵鐘の音によって五行思想という宇宙が表現されているというのはスケールが大きくとても興味深く感じました。
五行思想かどうかわかりませんが法螺貝の音階は木火(乙二音)土金水(甲三音)です。吹き方としては「古来より法螺(ほうら)は木火土金水に吹けという言葉があり最低音より最高音に至る五音階にして、声明にいう宮・商・角・微・羽に相当すと知るべし」とあります。今までは単に一音一音出していたわけですが、五行思想を表現する音を出していけたらと思いました(※これが相当難しい)。
下の木が低い音、上の水が高い音
高松塚古墳やキトラ古墳の石棺内部も五行思想によって表現されており、北は玄武・南は朱雀・西は白虎・東は青龍・天井は星宿図となっております。それぞれの要素が対立し相補い循環する諸行無常を表しているのでしょうか?私は詳しくわかりませんが、五行思想は奥が深くて面白いです。
最後に興味のある方はラジオ深夜便の過去の放送から聴くことができます。