セミの声もアブラゼミからツクツクボウシに変わり、何となく秋が近づいてきているような感じがします。
朝の4時頃でしょうか、いきなりミンミンゼミが鳴き出して目が覚めてしまいました。
とてもうるさいので、網戸を開けたら「ジジッ」とお墓のある方に逃げていきました。
セミの思い出といいますと、小学4年の時、夏の自由研究で「セミ」を取り上げたことです。
きっかけは、セミの羽化を偶然目にしたことに始まります。
暑い日の夕方、カブトムシを探そうと散歩をしていた時のこと。ふと、柿の木に目をやると見慣れない茶色の昆虫がゆっくり登っていき、ちょうどいい高さで止まりました。
「いったい何が始まるのか?」とじーっと見つめていると、背中が徐々に割れて白いモノが出てきます。どれくらい時が経ったでしょうか、体が全部出て羽が伸びきった時に、やっとセミだとわかりました。白と薄緑の羽化した神々しいセミの姿に小学生ながら感動する出来事でした。
羽化の感動をもう一度味わいたいと、次の日の夕方に散歩をしていると、同じ柿の木をセミの幼虫がゆっくり上へと登っているのを見つけました。
「また綺麗な姿を見ることができるかな」と観察していると、残念ながら背中が割れずに死んでしまいました。中には羽化の途中で死んでしまうのもありました。この死んだセミの幼虫を見るのはとても辛かったのを覚えています。
無事に羽化できたセミ、死んでしまったセミの幼虫を見ているうちに、この昆虫はどんな一生を送るのか自由研究で調べてみようと思いつきました。
翌日プールに入った後、金山図書館で昆虫の図鑑を開いてみると「セミのメスが生んだ卵が1年かかってかえり、約6年地中で暮らす。7年目の夏に羽化し約7日間ほど生きる(※色々説があるそうです)鳴いているのはオスで、メスは鳴かない」等のようなことが書いてありました。
自由研究では、羽化の観察と抜け殻の採取、日中はセミを採ったりして夏休みを過ごしました。模造紙には季節や時間によってセミの種類が違うこと、金山にいるセミ、泥のついた抜け殻はニイニイゼミ、十七年生きるセミの事などを書いて発表しました。しかし同級生から字が小さくて全然見えないと言われ学年代表に選ばれすらしませんでした。
残念な自由研究でしたが、私が得たものは大きかったです。それは、セミはその年に生まれ、やかましく鳴いて死んでゆく昆虫だと思っていたのが、約7日間を生きるために7年もの間地中で暮らす事実を知ることができたからでした。
セミに限らず私たちは、どうしても物事の表面だけを見がちです。綺麗に咲いた花は素晴らしいですが、そこに至るまで肥料や土壌、水やりのことまで思いをめぐらす方は少ないのではないでしょうか。食事だってそうです。今、目の前にあるご飯の一粒一粒が出来上がるまでいかに多くの人々の手数や苦労があったかを考えれば素直に「いただきます」と言えるのではないでしょうか。
あとどれくらいセミの鳴く日が続くことでしょうか。「あぁ、うるさいなぁ」と思わずに、7年の命がわかる人となりたいと思ったひと時でした。
アブラゼミ